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波動方程式の導出【量子化学】

量子化学

量子化学の補足の波動方程式についての解説になります。初めて来た方はこちらのページから見ることをおすすめします。

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波動方程式

シュレーディンガー方程式を学ぶ前に、シュレーディンガー方程式の基盤となる波動方程式について触れておきます。教科書では省略されることが多く、ここを知らないがために波動の性質が理解できず、次のシュレーディンガー方程式に苦手意識を持ちやすくなると考えています。つまずいた方は是非読んでみてください。

波動の関数の表し方

波動は波の動きのことを意味しています。紐を柱に括り付けて、上下に揺らせば紐が波の形になります。これは波動の一つです。

ランダムに紐を揺らす大きさを変えて波を作ってみます。ここでは時間をtと置いて3秒間紐を揺らすとします。

このように、ランダムに紐を振ればそれに対応して違った波の形が出るのがわかるでしょうか。では位置xの範囲においての波の形を考えてみます。

それぞれ波の形を抜き出してみると、このようになることがわかります。

時間tにおける位置xでの範囲の形が変化しているのがわかるでしょうか。ここで、位置を右にずらした場所、位置x’での波の形はどうなるでしょうか(t=3とします)。

これも波の形は変化することが予想できます。何が言いたいのかというと、波の形は時間\(t\)と位置\(x\)の二つの値に依存するということです。ここで、波を\(u\)として\(t\)と\(x\)の関数であると考えると、波の関数は

\(u(x,t)\)

のように表すことができ、この関数は位置と時間による2変数の関数であることわかります。つまり、波動は2つの関数によって値が決まるということです。

逆に1つの変数によって値が決まる関数の例としては、速度が挙げられます。右に一直線に速度\(v\)で動いているボールがあるとします。このボールの位置は時間tさえ決まれば、値が分かります。

古典的な波動方程式

波動方程式を導出してみましょう。まず、発生した波の一部分を拡大してみてみます。

拡大した部分で、x-yグラフをつくってみます。

xから微小変化したx+Δxの範囲について接線方向に力が加わっているとき、次のようになります。さらに、\(x\)成分と\(y\)成分に分けて運動方程式を考えてみます。

\(x\)成分 → \(-S_1cosα+S_2cosβ=0\)

\(y\)成分 → \(-S_1sinα+S_2sinβ=ma\)

\(y\)成分の右辺は運動方程式\(F=ma\)から\(m\)は質量(kg)、\(a\)は加速度(m/s2)を表しています。ここで考えている質量は、紐全体でなくて微小範囲のみでの質量になるので、長さあたりの質量を\(ρ\)(kg/m)として質量を考えてみると、\(ρΔx\)となります。加速度は\(u\)を2回時間微分したものと考えることができ、\(\frac{d^2u}{dt^2}\)と表すことができます。すると\(y\)成分は次のように表せます。

\(-S_1sinα+S_2sinβ=ρΔx\frac{d^2u}{dt^2}\)

角度\(α,β\)について、この角度は実際はきわめて小さい角度であり\(α,β\)≪1と考えられ、sinθ≒tanθのようにtanで表すことができます。

\(-S_1tanα+S_2tanβ=ρΔx\frac{d^2u}{dt^2}\)

\(tanβ\)は\(\frac{du}{dx}_{x+Δx}\)と表すことができ、

\(T\frac{d^2u}{dx^2}=ρΔx\frac{d^2u}{dt^2}\)

\(ρ,\)はkg/m、\(T\)はkg・m/s2で表すことができ、速度\(v\)はm/sより

\(ρ×v^2=T\)

と表すことができます。よって

\(v^2\frac{d^2u}{dx^2}=\frac{d^2u}{dt^2}\)

のようになります。最後に関数\(u\)は2変数であり、この式は一つの値を固定した偏微分方程式であり、\(dx\)を\(∂x\)で表すのが一般的なので

\(v^2\frac{∂^2u}{dx^2}=\frac{∂^2u}{dt^2}\)

と表され、これが波動方程式になります。

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