この記事では物理化学のおすすめの参考書・問題数について紹介していきたいと思います。私は大学で化学を学んでいて、物理化学に関する本を図書館で40冊以上読みました。その中で、おすすめの本を紹介していきます。
本の選び方として難易度を★☆☆~★★★まで設定してみました。初学者は上から順に読んでいくといいと思います。あくまで目安ですので参考程度にどうぞ。
★☆☆…初めて学ぶ人、なんとなくイメージを掴みたい人向け
★★☆…数式を理解したい人、院試で6,7割狙いたい人向け
★★★…院試9割狙いたい、物理化学の理解を深めたい人向け
物理化学の教科書・参考書
まずは物理化学全般を扱った本の紹介になります。一から読むというよりは、わからない部分があったら、その都度辞書のように使っていくのがよいと思います。
わかりやすい物理化学(★☆☆)
名前の通り、わかりやすく物理化学の解説が載っています。特に化学熱力学の解説がとてもわかりやすく感じました。物理化学の初学者にお勧めしたい一冊です。
アトキンス物理化学(★★★)
物理化学を学ぶ多くの学生が使っていると思います。ただ、文字数が多く初学者には解説が難解だと感じるので、この本は一通り物理化学を学んだ生徒向けだと思います。物理化学専攻の上級者向けの教科書です。
マッカ―リ・サイモン 物理化学(★★☆)
アトキンスと比べて式の導出がとても丁寧です。省略されやすい数学に関する補足も詳細に書かれています。ちなみに余談になりますが、上下巻のうち上巻はすべて量子化学の説明で使われているくらい量子に関する説明が丁寧です。
分野別おすすめ参考書
物理化学には大きくわけて、化学熱力学・統計力学・量子化学・反応速度論から成り立っています。物理化学を学ぶ上で、それぞれの分野のみを扱うおすすめの参考書を紹介します。
化学熱力学
物理化学を学ぶ上で、ほとんどの人が化学熱力学から勉強を始めると思います。エントロピー、エンタルピー、ギブスの自由エネルギーなどよくわからない単語が多く出てきて初学者を苦しめてきます。挫折しないためにも、独学の人はYouTube上にある有志の方の熱力学の解説動画と以下の参考書を一緒に使うのをおすすめします。
熱力学 三宅 哲(★☆☆)
熱力学の初学者向けの本になります。一回読むだけではわからないこと思うので、何回も読み直すことで理解が深まると思います。
熱力学-現代的な視点から(★★★)
物理学を学ぶ多くの人が高く評価している本です。こちらは参考書というよりも読み物に近いです。化学科の人にとってはオーバーだと感じるので、熱力学を一通り学んで、より理解を深めたい人におすすめしたい一冊です。難易度はやや高めです。
統計力学
化学熱力学が理解できればそこまで難しい分野ではないです。
なるほど統計力学(★☆☆~★★☆)
基本的な解説と式の導出が丁寧にされています。化学科の人はとりあえずこの本さえ学べば十分だと感じます。
統計力学 新物理学シリーズ(★★★)
上で紹介した「熱力学-現代的な視点から」と同じシリーズになります。量子に関する話題も絡んでくるため、量子化学を学んでいないと難しいかもしれません。理解を深めたい人向けです。
量子化学
量子化学は物理化学の一番の山場だと思います。量子化学を理解できれば、物理化学を制したと言っても過言ではないと思います。(自分は物理化学の中で量子化学の勉強に一番時間がかかりました)
わかる×わかった!量子化学(★☆☆)
初学者におすすめの一冊です。この本はイラストを使って説明がされているため、量子のイメージが掴みやすいです。また調和振動子や角運動量といった、他の参考書で省略されがちな部分もしっかり説明されていて網羅性もばっちりです。
量子化学 基礎からのアプローチ(★☆☆~★★☆)
こちらの参考書はシュレーディンガー方程式をはじめとする難しい数式を丁寧に導出しています。内容は院試レベルまで対応していて、章末問題もついているため問題演習をしたい人にもぴったりです。
反応速度論
高校化学の理論分野でも扱った部分になります。高校化学の理論分野を忘れている人は、復習してから学ぶと理解しやすいと思います。化学熱力学、量子化学と比べると学ぶ量が少なめです。
反応速度論 物理化学入門シリーズ(★☆☆~★★☆)
基礎から応用まで幅広く対応しています。初めての人はまず前半の基礎の部分だけ読んでみるといいと思います。
物理化学のおすすめ問題集
物理化学は問題演習をこなすことがとても大切です。今までいくつかの参考書を紹介してきましたが、理解はできても時間が経つと忘れていることがほとんどです。内容を忘れないためにも問題をこなしていき定着させていくと良いでしょう。そのためこれから紹介する問題集は、上記の参考書と一緒に使っていくのがおすすめです。
右脳式 演習で学ぶ物理化学 熱力学と反応速度 (★☆☆~★★☆)
この本は熱力学と反応速度論メインの問題集になります。例題で解き方を身に付ける→演習問題を解く、を繰り返すことで自然に現象を理解することができます。個人的な感想として大学受験の参考書を使っている感じでした。物理化学を学んだばかりの初学者におすすめです。
物理化学演習 大学院入試問題から学ぶ(★★☆~★★★)
2022年に出た本で、この手の問題集の中では情報が比較的新しく、圧倒的にお勧めする本です!難易度としては定期試験から院試まで対応できます。解説も丁寧なので院試を受ける人は是非使ってほしいです。
物理化学演習 大学院入試問題を中心に(★★★)
物理化学演習 I(化学演習シリーズ1): 大学院入試問題を中心に (1) (化学演習シリ-ズ)
物理化学演習 II(化学演習シリーズ2): 大学院入試問題を中心に (2)
上の本と名前が似ていますが、こちらのがやや難易度が高めです。物理化学を専攻で学んだり、院試で高得点を狙いたい人は是非使ってみて下さい。この問題集ができれば物理化学の院試は問題ないでしょう。
物理化学は難しい分野
以上、私のおすすめする物理化学の参考書・教科書でした!物理化学を学んだほとんどの人は実感していると思いますが、大学化学の中でも物理化学はとても難しい教科です。教科書や参考書を読んでいて、必ずわからない部分に直面すると思います。
わからないと思った部分が出たら、一旦読み飛ばしてみてもいいと思います。そして一度読み進めてみて下さい。そしてある程度先がわかった状態で読み返すと、すんなり頭に入ってくることも多いです。このように物理化学の勉強は、全体像をつかむことが大切だと感じます。
日々の勉強の助けに少しでもなれたらうれしいです。
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