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分子軌道法について【量子化学】

量子化学

化学において原子が電子1個ずつ出し合って結合することを共有結合と言います。電子と深く関わりがある量子化学において、共有結合は研究対象としてよく取り上げられます。量子の世界における共有結合について解説していきます。

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水素分子の共有結合

共有結合は様々な原子で起こりますが、水素分子の共有結合は一番典型的でシンプルな結合になります。2個の水素原子が近づき、互いの1s軌道が重なると水素分子が形成します。このとき、水素分子の周りには新しい軌道ができ、この軌道のことを分子軌道(MO)と呼びます。

分子軌道法LCAOMO

量子化学において分子軌道関数を原子軌道関数で表現することを線形結合関数(LCAOMO)と言います。そのときの関数は次のようになります

\(ψ=c_aφ_A+c_bφ_B+c_cφ_C…\)

分子軌道関数\(ψ\)と\(φ\)の係数\(c\)は未知数、原子軌道関数\(φ\)は既知数となっています。水素分子を例にすると、線形軌道関数は以下のようになります。

\(ψ=c_1φ_1+c_2φ_2\)

ここで規格化を行います。波動関数\(ψ\)のエネルギーは

\(E=\frac{∫ψHψdτ}{∫ψ^2dτ}\)

であり、このとき水素分子の波動関数は\(ψ=c_1φ_1+c_2φ_2\)とわかっているので代入してみます。

\(E=\frac{∫(c_1φ_1+c_2φ_2)H(c_1φ_1+c_2φ_2)dτ}{∫(c_1φ_1+c_2φ_2)^2dτ}\)

これを展開してみると、

\(E=\frac{{c_1}^2∫φ_1Hφ_1dτ+2c_1c_2∫φ_1Hφ_2dτ+{c_2}^2∫φ_2Hφ_2)dτ}{{c_1}^2∫{φ_1}^2dτ+2c_1c_2∫φ_1φ_2dτ+{c_2}^2∫{φ_2}^2dτ}\)

というように長い数式が出てきます。一見すると難しそうですが、この式について一つずつ見ていけば難しくないです!

エネルギーの3つの積分

求めたエネルギーの式には積分がでてきますが、この積分は次のように3種類の積分に分けることができます。

重なり積分

エネルギー式の分母の第二項\(∫φ_1Hφ_2dτ\)は重なり積分といい、\(S_{m,n}=∫φ_mHφ_ndτ\)で表すことができます。この式は異なる波動関数の積を積分した形になっていて、結合における原子軌道の重なりの程度を表しています。全く重ならないと\(S=0\)、ピッタリ重なれば\(S=1\)という風に、重なり関数\(S\)は0~1の間の値を取ることが分かります。

クーロン積分

エネルギー式の分子の第一項と第三項を、クーロン積分といいます。\(∫φ_mHφ_mdτ=H_{mm}=α\)で表し、この積分は原子軌道のエネルギーを表します。結合を作って安定化されれば、\(α\)の値は小さくなります。クーロン積分は結合の安定性の基準として図ることができます。

共鳴積分

エネルギー式の分子の第二項は共鳴積分といい、\(∫φ_1Hφ_2dτ=H_{mn}=β\)で表します。重なり積分と形が似ていますが、こちらは異なる二つの波動関数で\(H\)はさんだ形をとり、分子軌道の安定性を表すことができます。

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