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今回は錯体についての解説です。
錯体は大学の無機化学で学ぶことが多く、本来の化学結合と異なる形をとるので、理解しにくい分野だと思います。
錯体の基本のなりたちをわかりやすく解説していきますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
錯体の基本
錯体の結合方法
最初に錯体とは、別名で配位化合物と呼ばれます。これは配位結合によって結合がつくられているためにこのような呼び名があります。配位結合は電子を一つずつ出し合う共有結合とは異なり、孤立電子を供給することで本来の結合と違った結合ができます。
H2:2つのH+が足りない電子を出し合ってくっついています。これは共有結合です。
NH4+:Nは非共有電子対が3つなのでNH3という形しかとれないはずですが、NH3のsp3混成軌道の孤立電子対をH+に供給して、より安定なNH4+を作っています。これが配位結合です。 (錯体ではこの結合が使われています!)
錯体の構成
錯体は金属イオンMnn+にnより多くの陰イオンまたは孤立電子対を含む分子が結合しています。
例えば、Fe2+にCN–が6個つくと[Fe(CN)6]4-錯体ができます。
Co3+の6個の空軌道にNH36個が配位結合すると[Co(NH3)6]3+錯体ができます。

今は、「錯体とは金属イオンの周りにたくさんイオンがついてるんだなー」という感じで大丈夫です。
錯体形成の種類
錯体は中心金属Mnの空軌道に配位子が電子を供与して生成されることがわかったでしょうか。次に、2,4,6配位錯体について紹介します。
2配位錯体
2配位錯体は直線型の錯体が存在します。例えばd10イオンであるAg+,Au+,Cu+は直線型の錯体を形成します。Ag+を例にとって考えてみると、sp混成軌道によって錯体を形成しています。Ag+になると5s軌道に入っていた電子が抜けるため図のような電子配置をとります。すると、5s5pでsp混成軌道を作り配位子の電子が入ることで錯体を形成しています。


4配位錯体
4配位錯体は生四面体型と平面四角形の2種類が存在します。
正四面体型
生四面体の構造をとる錯体はsp3混成軌道を形成する金属です。例えばNi2+、Cu+、Hg2+、Zn2+等が挙げられます。
Ni2+を例にとると、Niの電子配置は[Ar]3d84s2であり、Ni2+になると4s軌道に入っていた電子が抜けるため図のような電子配置をとります。すると、4s4pでsp3混成軌道を作り配位子の電子が入ることで錯体を形成しています。


平面四角形型
平面四角形の構造をとる錯体はNi2+、Pt2+、Pd2+、Zn2+等が挙げられます。これらはdsp2混成軌道で配位子をとります。
Pt2+を例にとると、Ptの電子配置は[Xe]5d96s1であり、Pt2+になると5dと6s軌道に入っていた電子が抜けるため図のような電子配置をとります。すると、5d6s6pでdsp2混成軌道を作り、配位子の電子が入ることで錯体を形成します。


6配位錯体
6配位錯体は、錯体の中でも最も安定で正八面体型の構造をとります。正八面体の構造をとる錯体はCo3+、Fe2+、Fe3+、Rh3+、Ni2+、Cu2+等が挙げられます。
Fe3+を例にとると、Feの電子配置は[Ar]3d64s2であり、Fe3+になると3dと4s軌道に入っていた電子が抜けるため図のような電子配置をとります。すると、3d4s4pでd2sp3混成軌道を作り、配位子の電子が入ることで錯体を形成します。この場合は内部軌道錯体といいます。


次に、Fe3+になると3d軌道に図のような電子配置をとる場合があります。すると、4s4p4dでsp3d2混成軌道を作り、配位子の電子が入ることで錯体を形成します。この場合は外部軌道錯体といいます。


まとめ
今回は無機化学の錯体の基本となるなりたちについて紹介しました。
錯体は、中心金属にいろいろな配位子がついていることが理解できれば良いと思います。錯体はまだ学べることたくさんあるので、参考書などで学習してみてください。
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